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未曾有の。

あまりにも大きな出来事の渦中にいると、
人はそのことの重大さをきっと、おしはかれない。
アンティークの着物を販売しているときもよく思ったものだ。
「戦時下にあって、なぜにこんな美しい着物が生まれたのだろう?」と。
それはもちろん戦争が遠くの国で起こっていた大正・昭和初期の着物だったけれど
それにしても、だ。

そして今同じ日本で起こっている出来事はそれと同じような気がしている。

震災があった東北と関東からうんと離れた所にいる私と主人だが
特に今回の原発の事故は人間が犯した過ちの歴史を
ゆうゆうと塗り替えてしまう惨事になるかもしれない、
つまり「チェルノブイリを越すのではないか」と
事故の当初からハラハラしながらテレビの無い家で必死に情報をかき集めた。
政府は言葉足らずな情報ばかりを告げるだけで、知りたいことは教えてくれないので
私と主人は原子力資料情報室という、非常に信頼できる情報を発するNPOを見つけて
毎日ここで行われていたプレスカンファレンスや原発設計者および
放射線医の説明を息をのんで聞いていた。

はっきり言って、もしも私が妊娠していなければ
原発のことは、今ほど気にとめなかったと思う。
けれど私は自分の命にかえてでも守るべき新しい命を宿していて
生まれてくる赤ちゃんに
太陽の下おおきく息を吸って、歩いて、水を飲む。
こんな当たり前のことですら、当たり前でなくなってしまったくらい
汚染された地球を残してしまったことを
心底、申し訳なく思って涙がたくさん出た。

それに原発の事故がチェルノブイリと同様の大爆発を起こせば
700km離れたこちらだって高度放射能汚染区域に入る。
私の宿した胎児はやっと7ヶ月。
まだまだ出来上がっていない器官がたくさんある。
放射線はDNAの結合を傷つける。
その傷を人間の体は修復しようとするが、まれに間違って修復することがある。
それがガンの原因になる。
それにもしも間違った遺伝情報の配列を胎児である我が子が
繰り返してしまったらどうする?
と考えると、目の前が真っ暗になった。

「チェルノブイリは事故発覚の2日目から石棺を始めたのに、
なぜ政府も自衛隊もなにもしない?」
と主人が憤っていた。
自衛隊がヘリから注水しようとして放射線量が高過ぎて中断した日
まだまだその大爆発の危険性があった頃なので
いっそ、しばらくフランスに逃げてしまおうかと思ったけれど
自分の子供だけが助かればいいってもんじゃないし
これは放射能との長期戦になることが何となく判ったので
むしろ日本に留まって脱原発の運動をしようと決めた。

何事にも冷静に対処し、
大したことなく振る舞うのは日本人の美徳だと思う。
だけれど、例えば闇雲に怒りちらすことと
正しくないことに声をあげることとは全然ちがう。
これはもう、今声をあげないと
私達はまた同じ過ちを繰り返すにちがいない。
せめて次世代を担う子供や赤ちゃん、そしてそれを育む女性には
正しい情報を伝えてほしい。
そうすれば少しずつ防げることだって、きっとあるのに。
そんな気持ちで毎日を過ごしています。

ご興味のある方は下記のURLから住民避難拡大を求める要望書に
ご署名頂けたらと思います。
どうぞよろしくお願いします。
http://www.jca.apc.org/mihama/fukushima/signature110328/signature110328_1.htm

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